東日本大震災10年後の県外避難者の帰還見通しは、阪神・淡路大震災(1995年
1月17日発生)の実態から判断すると、かなり厳しい事態になることが予想されます。
県外避難者の1/4~1/5以下しか帰還を達成できない可能性が高いのでは
ないでしょうか。
では阪神・淡路大震災での県外避難者の帰還状況を見てみましょう。
兵庫県の発表によると、阪神・淡路大震災で兵庫県外に避難し帰還を望んだ人で、
兵庫県の相談窓口に登録した972世帯(*1)の帰還状況は、
2014年までに帰還できた世帯 27%(262世帯)
帰還を断念した世帯 41%(397世帯)
死亡・行方不明の世帯 26%(257世帯)
帰還を希望する世帯 6%( 56世帯)
となっています。
震災後20年が経とうとしている現在でも帰還できた世帯は1/3に達していないのです。
帰還できない理由は、
・納得できる条件の仕事が見つからない
・納得できる条件の住宅が見つからない
・子どもに転校させたくない
などが主なものです。
*1)兵庫県は、2000年に「ひょうごカムバックコール&メール事業」を始め、
県外避難者で兵庫県に帰還を希望する人に登録してもらい、公営住宅の募集要項を
送ったり、相談員が定期的に電話したりしてきた世帯。
東日本大震災の状況を見てみましょう。
県外避難者への働きかけは、
「避難者を受け入れた自治体が総務省の『全国避難者情報システム』に登録し、
被災自治体が広報誌や相談窓口がわかる資料などを送る」
仕組みになっています。
復興庁の発表では、岩手・宮城・福島3県からの県外避難者は2012年
3月時点(ピーク時)で7万3千人でしたが、2014年12月時点では
5万4千人になっており、26%が帰還したと推定されます。
3/4は帰還を果たしていないことになります。
岩手県の発表では更に厳しい見通しの数字になっています。
元の市町村に戻りたい人 25.9%(2012年の37%から11%減少)
現在の市町村に定住したい人 43.2%(2012年に比べ10%程度増加)
“元の市町村に戻りたい人”は今後も減少し続けるでしょうし、“現在の市町村に
定住したい人”は今後も増加し続けるでしょう。
東日本大震災の県外避難者にとって、阪神大震災以上に帰還を困難化させる厳しい状況が
待ち受けています。
・2020年の東京オリンピック(改修・新築などの工賃や材料費の高騰)
・福島県の放射能問題(半永久的な居住制限区域)
政府と東京電力が本腰を入れて(最優先で)復興に取り組まないと、
避難者(特に県外避難者)は永久に取り残されたままになり、東北3県の復興は
夢物語になってしまうでしょう。