ツタヤ運営の公立図書館、いわゆる“ツタヤ図書館”が全国的に賛否を引き起こし、
マスコミで大きく取り上げられています。本記事内では他の公立図書館と区別するため
以降、“ツタヤ図書館”と記述します。
“ツタヤ図書館”の流れ、運用実績などから筆者が感じる問題点を述べます。
■“ツタヤ図書館”の流れ
2013年4月1日
佐賀県武雄市“ツタヤ図書館”がオープン
⇒地元では非常に好評で、来館者も急増(改装前の3倍以上)したようです。
2015年10月1日
神奈川県海老名市“ツタヤ図書館”がオープン
⇒共同事業体であるTRCとCCCとの協力関係が解消される騒ぎに
なっています。原因は後述の問題3~問題5で衝突になったようです。
注:CCC=カルチュア・コンビニエンス・クラブの略で、レンタル大手の
「ツタヤ」を運営。
TRC=「図書流通センター」の略で、全国で432の図書館の
指定管理者や業務委託を受託している業界最大手。
2015年10月4日
愛知県小牧市では、建設予定の“ツタヤ図書館”反対運動により住民投票が行われ、
反対が賛成を上回りました。
⇒小牧市は“ツタヤ図書館”建設計画を白紙に戻したようです。
2015年10月28日
宮城県多賀城市は“ツタヤ図書館”を現在、建設中です。計画では2015年春、
オープン予定が遅れています。
■“ツタヤ図書館”の問題点
問題1.「Tポイントカードによる図書貸し出し」についての問題は本ブログの
2014年8月14日投稿で触れていますので省力します。
問題2.武雄市におけるCCCの図書館事業が2年連続赤字です。5年毎の契約更新に
なっており、事業継続の保証がありません。
問題3.図書購入リストの作成が、
・書籍の販売・流通量が日本一のCCCのデータ
・図書館の利用者アンケート
をベースに行われており、公立図書館の目線が欠落しています。
⇒武雄市、海老名市ともに不祥事が発生しています。
-10年以上前の資格試験対策の中古本の購入
-海外の風俗店掲載の旅行本購入
問題4.図書分類がCCC独自のジャンル分けになっており、自治体の公立学校や
近隣他都市の図書館、大学などとの相互貸出し制度上で不具合が生じます。
注:近年では近隣他都市や近隣大学との相互貸出しの仕組みが当たり前に
なっています。
問題5.自治体は、住民に対して平等に共通のサービスを提供する義務があるにも
かかわらず、“ツタヤ図書館”利用者のみに特別なサービスが提供されています。
例:武雄市“ツタヤ図書館”では2014年度、120以上のイベントが
開催されています。
・本の販売を絡めた著者のトークショー
・朝ヨガ
・子ども向けバリスタ講座 など
1自治体1図書館体制であれば問題ありませんが、1自治体複数図書館体制で
あれば住民不平等の問題が生じます。松戸市を例にとりますと、松戸市は
本館+19分館体制で、19分館では本館同様のサービスが受けられます。
仮に本館が“ツタヤ図書館”化したと仮定すると、19分館すべてを
“ツタヤ図書館”化してもらえないでしょう、赤字事業(問題2参照)ですから。
⇒海老名市は人口12万人ですから1図書館では済まないはずです。
どうなっているのでしょうかね?
問題6.“ツタヤ図書館”は利用者選別の発想があるのではないでしょうか?
・書架が高架式 → 近視や老年期の人たちにとって利用し難い
注:高架式書架は利用者の便宜より見た目の美しさを
重視したもので“ツタヤ図書館”の売りらしく、どの自治体の
“ツタヤ図書館でも採用されています。
・海老名市“ツタヤ図書館”ではジャズがバックグラウンドミュージック
→ ジャズが嫌いな人(筆者もその一人)にとって苦痛な環境です。
問題7.「図書」より「人集め」を重視しているように見受けられます。
「人集め」 > 「図書」
筆者には問題1、問題3、問題5などからそれが強く感じられます。
■結論
私企業の図書館であれば問題ないのでしょうが、自治体における公立図書館の
位置づけからは明らかに踏み外してしまっており、問題だらけといった印象を
受けます。
自治体の役人にはもっとしっかりしてもらわないといけないのですが、
自治体住民も小牧市の市民のようにしっかりしてほしいものです。