高度経済成長期に全国各地に作られた大規模盛り土造成地の防災対応が
進んでいません。1995年、阪神大震災で発生した兵庫県西宮市の
大規模盛り土造成地の斜面崩落事故で大きな被害が出たことを受け、
国(国土交通省)は2006年に「宅地耐震化推進事業」を創設し、
全国の自治体に対応を指示しています。
「宅地耐震化推進事業」内容
(1)大規模盛り土造成地を抽出する1次スクリーニングと造成地マップの公表
・大規模盛り土造成地の位置と規模を把握
・造成地マップの公表と活用
(2)危険度を調べる2次スクリーニングの実施
・造成地ごとに地盤を調査して危険度をチェック
(3)危険個所への対策工事の実施
・くい打ちや擁壁改修などで盛り土を補強
・地下水を抜く
新聞社の調べによると、大規模盛り土造成地は全国に3万97ヵ所あることが
判明しています。大規模盛り土造成地個所数の上位5府県は次の通りです。
1.神奈川県 5586ヵ所
2.大阪府 3589ヵ所
3.愛知県 2987ヵ所
4.茨城県 2213ヵ所
5.兵庫県 1910ヵ所
宅地耐震化推進事業がスタートしてすでに13年が経過しましたが、
造成地マップ未作成・未公表の自治体が27.2%もあるのは
なげかわしいことです。
都道府県レベルで以下の4県が実にひどい状況です。
大規模盛り土造成地
個所数 公表率
千葉県(54自治体) 549ヵ所 11.1%
岡山県(27自治体) 329ヵ所 14.8%
佐賀県(20自治体) ?ヵ所 0%
沖縄県(41自治体) ?ヵ所 0%
国土交通省によると2次スクリーニングが終わったのは26自治体しか
ないそうです。(2019年8月の新聞報道による)
宅地耐震化推進事業には大きな課題があるようです。
課題1.「調査に必要な費用や業務量が非常に大きく、予算や人の確保が課題」
(自治体の見解)
課題2.「盛り土造成地の数が多く対応が難しい」(自治体の見解)
課題3.耐震化対策工事費は、国、市、住民の三者負担となるが、
住民負担の説得が困難である。